【感想】『グローバライズ』木下古栗
木下古栗の作品に、大仰な意味や仕掛けを見出そうとすることはできない。
世に蔓延る「意味至上主義」というか、「文学とは、小説とは、物語とはかくあるべき」みたいな、括弧付きの「格調高い文学論」を一笑に付す。
筆致や形式は、それこそ「格調高い文学」のようである。いわゆる文章力の良し悪しを見極める力など僕にはないが、少なくとも素人目には、そう見える。
そういう格調高い筆致で描かれるのは、下品な下ネタか荒唐無稽な超展開。その筆致と内容の不一致を、どこかのブログで「アイドルにウンコをさせるようなもの」と評していたが、言い得て妙だと思う。粗筋をなぞるのも馬鹿らしい、真顔で無茶苦茶な冗談を言うような、シュールとも違う微笑を誘う12の短編集。意味至上主義な読書あるいは人生に疲れた時に、「全ての出来事に、重要な意味なんてないんだよ」ということを最高の形で再認識させてくれる一冊である。