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あの青い作業着を脱ぎ捨てて。

アニメ・漫画・小説・ゲーム等のフィクション作品の感想をゆるく綴ります。

【感想】『春と盆暗』熊倉献

春と盆暗 (アフタヌーンコミックス)

春と盆暗 (アフタヌーンコミックス)

どうして君みたいなエイリアンを好きになってしまったんだろう。

帯文の引用の通り、エイリアンのような不思議女子が、恋に疎めな盆暗男子を翻弄していく短編集。4編とも日常の中にありながら少し不思議な感覚。どの話も女の子が魅力的。

例えば、第1話『月面と眼窩』のサヤマさん。町の製麺所のレジ打ちアルバイトである彼女は、人当たりが良く、それ故に変なお客に絡まれることが多い。新人バイト・ゴトウは、ニコニコしながら背面で手をグーパーしているとサヤマさんに気づく。で、絡まれている最中の、つまりモヤモヤしている時のサヤマさんの頭の中が、これ。


『春と盆暗』 1巻

僕も今度モヤモヤした時は想像してみよう。

その他、中央線の駅名を偽名に使ってオトコとカラオケに来る21歳低身長社会人女子『水中都市と中央線』、その場のノリで適当に話している年上女性『仙人掌使いの弟子』、原材料不明のケーキの中身を暴くべく時間の巻き戻しを検討する女子『甘党たちの荒野』の3編(とオマケ)が収録されている。

どの話も、不思議女子の魅力を存分に出しつつ、起承転結の手際良く男女の出会い・交流を描いている。会話のセンスも良く、いつまでも浸っていたい独特の心地よさが広がっている。キャラの造形はアッサリしているが、どの娘も魅力的だし、細かい表情の描き分けも上手い。不思議女子ワールドが日常風景に混ざり込んで来るのも、単なる不思議形会話劇に終始しないエッセンスとなっている。基本的には出会って、交流して、さらに踏み込んだ関係になり始めたところまでを描いていて、今後のそれぞれの関係性を想像する余白も良い。

独特の心地良い浮遊感を覚える、ハイレベルで一風変わった恋愛譚である。今後も是非追いかけていきたい漫画家。