読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

あの青い作業着を脱ぎ捨てて。

アニメ・漫画・小説・ゲーム等のフィクション作品の感想をゆるく綴ります。

【感想】『少女終末旅行』つくみず

漫画 感想

 

少女終末旅行 4巻

少女終末旅行 4巻

 

  タイトル通り、少女二人が終末世界を旅行する話。旅行というよりは放浪だが。もう少し具体的に言うと、しっかりものの黒髪ツインテのチトと楽観主義者でちゃらんぽらんのユーリという少女二人が、インフラはほぼ死に、日々消費する食料を計算しないと飢餓まっしぐらで、人もほとんどいないという終末世界を、ケッテンクラート(半装軌車)に乗って旅をする、という話。ただし終末世界が舞台であるが、基本的に悲壮感や絶望感は描かれない。ゆるふわで、終末世界における様々な発見(過去の文明とか)や、時折出会う人間たち(地図作りに執念を燃やす青年とか、飛行機作りに精を出す女性とか)を通して、チトとユーリがあれこれ会話をする……というのが基本線。ゆるふわな会話だけでなく、人生哲学っぽいものやら過去の文明との折り合いの付け方やら、そういう物事を考えるフックのようなものがちりばめられている。
 2巻のあとがきで、作者の「ただ生きるためだけに生きれたら」という言葉があったが、チトとユーリの旅はまさにそれを象徴している。さしたる旅の目的地はおろか人生における目的、言い換えれば希望、のようなものは無い。水や食料を探して、生命活動を維持していくための旅。旅の中で小さな発見を重ね、時折何か教訓めいたことを学ぶこともあるが、それを活かして何かを為すでもない。まさに「生きているだけ」。それでも、いやだからこそ、この作品は面白い。他の作品にはない魅力がある。終末世界という舞台装置を設置する作品のほとんどが、「どうして終末に向かったか」とか「終末世界から脱却する為の劇的な行動」みたいなものを、いわば大きな物語を描いてきた中で、この作品は無目的にミニマムな生をぬるぬる全うする姿を描いている。
 旅の道中で出会う人間は二人いて、先述の地図作成マン(カナザワ)と飛行機作成ウーマン(イシイ)である(別々のタイミングで出会う)。彼らはチトとユーリのような他者とのふれあいはほとんど無く、一人で地図or飛行機の作成に精を出す。最終的には失敗するも、再び自分たちの目的に向かって歩き出す。自分たちの人生にはこれしかないんだ、とでも言うように。目的を持って一人で人生を歩んでいる彼らと、無目的に二人で人生を歩むチトとユーリの対比を通して、「どう生きるのか」という本作の裏(?)テーマのようなものが照射されている。
 ゆるふわな旅ではあるが、そのゆるふわさの源泉というか、この終末世界で「生きるために生きる」ことを実践できているのは、「絶望と仲良くし」ているからだろう。これはユーリの台詞であるが、ある種の開き直り・諦念という人生観が如実に現れている。終末世界だろうが、我々が生きているこの現実世界だろうが、質こそ違えど「絶望」なんてものは大なり小なり溢れている。彼女たちのようにゆるくかつ逞しく生きるには「絶望と仲良くなる」ことが不可欠なのだろう。難しいけど。

【感想】『第七女子会彷徨』つばな - 凡才サーキュレーション