あの青い作業着を脱ぎ捨てて。

アニメ・漫画・小説・ゲーム等のフィクション作品の感想をゆるく綴ります。

【感想】たまこラブストーリー

 

 やたら評判が良いのでいつか見ようと思っていて、結局延ばし延ばししていたが、地上波で放送され、ようやく見る機会を得た。

結論として、恋愛青春アニメの頂点じゃないですか?というくらい、素晴らしかった。

たまこまーけっとは、頑なに商店街及び日常の変化を描かなかった作品だったが、それと対になるように、今作では青春( 特に高校3年生という時期)における心情・環境の変化、そしてその変化への不安、克服を清々しく、鮮明に描いていた。

他の作品を引き合いに出して恐縮だが、青春映画アニメに、最近話題の「君の名は。」がある。あの映画も好きなのだが、瀧と三葉が惹かれ合う過程というか心の機微が(意図的に・尺的に)ばっさりカットされていたり、瀧くんの岐阜くんだりまで乗り込んでいく半端ない行動力だったり、三葉の突然上京して自分を認識していないっぽい人間にリボン渡したりする勢いが目についてしまい、「恋愛」「思春期」「青春」としては個人的には受容できなかった。じゃあジャンルはなんだんだと言われてもアレなのだが。一歩踏み出すことを微塵もためらわず、グイグイ行動して三葉(とその他大勢)を救う瀧くんや、私が勢いのない人間であることもあるが、いくら若者と雖も迷いがなさすぎじゃないですか、と。

翻ってたまこラブストーリーは、一歩踏み出す勇気を描いている。告白するまで悶々とし、告白してからも悶々としているもち蔵、今までの関係性や環境の変化を恐れ、戸惑い、一歩進み、もち蔵の気持ちを受け取るたまこ。この部分、つまり「高校男児が幼馴染に告白して女子高生がそれを受け入れる」という、言ってしまえばそれだけのストーリーに焦点を当て、80分で懇切丁寧に描き切ったのは、ホント凄いと思う。

終盤、もち蔵の気持ちを受け止める方向になりつつある段での、商店街の人々の何気ない(夫婦的)会話を聞き、「みんな色々あったんだ」とたまこが考えるシーンが好きで、「商店街とたまこ」の関係性というか、たまこにとっての商店街の大きさというものを再認識した。(たまこにとっては)変化しないことの象徴である商店街から、もち蔵の気持ちを受け止める勇気=変化を受け入れる勇気を貰うこのシーンは、なんとも言えない感慨深さがある。

映画的な小道具の使われ方も良かった。キーアイテムの糸電話はもちろん、バトンや汽車模型等、色々と象徴的な使われ方をしていたので、何度も見ながら映像的意味を考えるのも楽しそうである。

あと京アニ(というか山田監督)と言えば足ですね、足。足の動きで心情を表現するお得意のアレも健在だった。

たまこの友達や商店街の方々の優しさも染みる。特にみどりちゃんは、この映画でたまこたちと同じく一歩踏み出しており、(もち蔵とたまこの仲を認めた)良かった。

 

正直ここまで良いとは予想しとらず、録画をしていなかったので、円盤を買わなきゃなぁ、と思う次第です。