あの青い作業着を脱ぎ捨てて。

アニメ・漫画・小説・ゲーム等のフィクション作品の感想をゆるく綴ります。

【感想】『劇場版 甲鉄城のカバネリ 総集編前編 集う光』

前書き

「カバネ」と呼ばれるゾンビ的怪物達が跋扈し、人類が脅威に晒されている世界。時代設定は不明だが、装甲蒸気機関車が走る中、武士が袴を着て刀をぶら下げているので、スチームパンクと時代劇バトルアクションとパニックモノを混ぜた感じ。

既に完結しているテレビアニメの総集編だが、1クールを前後編の映画にしているので、カットも少なく、そんなに違和感無く観れるのでは、と思う。

因みに私はテレビ版は未視聴…。バタバタしてて観れなかった記憶があるので嬉しい劇場化。

以下、いくつかネタバレ感想を。

1.無名のアクションシーンが麗しい

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 ↑が無名ちゃん。麗しい…。

本編は未視聴だが、このキャラは元々知っていた。CMとか書店のアニメ雑誌とか、新宿アルタのビジョンでの予告編とかで。端的に言ってめっちゃ好みなビジュアルだった。因みにキャラデザはマクロスの人らしい。

この作品の褒め所というか好きな部分の90%はアクションシーンで、その90%の内の99%は無名ちゃんのものである(当社比)。

無名はカバネと人のハーフである「カバネリ」という存在で、現時点では彼女と生駒のみがこれに該当する。基本的に他の面々は割と地味な肉弾戦に終始しているし、生駒も肉を切らせて骨を断っていく無骨なバトルスタイルが多いので、余計に無名の華麗なバトルアクションに見所が集中している。

無名ちゃんの華麗で可憐なアクションと、それを引き立てる為のカバネや他の面々の奮闘は、劇場ならではの臨場感があって凄く良い。こういうバトルアクションは、劇場で観た時の上振れが他ジャンルとは比べ物にならないと思う。テレビ版観てないから比較出来ないけど。

因みに、個人的には機関車に乗る前の、街での戦闘シーンが一番好み。戦場を広くして縦横無尽に駆け巡る感じが。後は首のリボンを外すシーン。最高に色っぽいリミッター解除だと思います。

 

2.生駒というキャラクターを主人公たらしめるもの

個人的に好きな部分のうち、残りの10%がこれ。ただしここはホント超個人的で、人によってはマイナスに捉える部分であるかも。

生駒は、物語の序盤でカバネに食われるも、ウイルスの侵食を無理矢理食い止め、カバネとならずにカバネリになった。カバネリという特殊性が、生駒を主人公たらしめる要因の一つであることは間違いない。が、彼の主人公属性の大部分はそこにはない。

生駒はカバネリと化す前から、カバネの研究やカバネを倒す為の道具開発を行なっていた。生駒以外の庶民は、基本的に逃げ惑い、武士達に対カバネ戦闘を任せっきりという状況の中で。

生駒の、対カバネへのモチベーションは、「妹を見殺しにした、カバネから救えなかった」という経験にある。が、この世界で肉親を失うなんて経験は、作中でも言われているように、ありふれている。他の庶民も経験していることだろう。

生駒が、カバネ殲滅に対して、他の庶民とは一線を画すモチベーションを保っているのは、「性格」「生まれ持った意志の強さ」に他ならない。「妹を守れなかった」という経験から、見殺しにしてしまった自分を悔い、「俺は俺の誇れる俺でいたい!」という誓いを実行していくのだ。それはカバネリ化してからはもちろん、カバネリ化する前(=比較的無力)も。後は「今は馬鹿にされているけどいつか見返してやるからな…!」という、やや後ろ向きな見返しマインドも、彼を主人公たらしめる性格だと思う。

カバネリ化した後は、当然の如く庶民や武士達から迫害されるが、それでも彼は「俺は俺の誇れるのでいたい!」という誓いと「見返しマインド」を以ってしてそれらを跳ね除ける。

この前向きな誓いと後ろ暗い見返しマインドを併せ持つ主人公、賛否両論あるっぽいが、個人的には結構好き。

 

3.ストーリーのお話し

ストーリー自体は正直そんなに面白くないし、素人目線でもちょいちょい粗があるように見える。

まず、ゴールが見えない。「何をすればこの物語は解決と言えるのか?」というお題目が半分を過ぎた現段階で全く提示されていないので、話に入り込み辛い。「カバネを殲滅して平穏な世界を取り戻す」を目標に据えるならば、この段階で「カバネとは一体何なんだ?」「どうすればその場しのぎの戦闘勝利ではなく、種として根絶させられるのか?」という問題提起や足掛かりがある程度はあるべきだと感じるが、それが無い。かと言って他にさしたる目的目標があるようにも見えない。単にその場しのぎの逃走のための戦闘・機関車での移動にしか思えない。その点は、個人的にはマイナスポイント。一応、生駒の心中の誓いで「妹の分まで生きる」とは言っているので、「生き延びること自体が目的」と言えなくもないが、こんなジリ貧ではそれも難しいだろうし、物語の最終目標としては些か弱い。物語の終着点が不明確、これは個人的には結構マイナス。

また御一行がピンチに陥るのが、基本的には誰かのヘマというか、結構な凡ミスとか先走りとかが原因になっているのが殆どである。これもパニックモノでは致し方ないかもしれないが、もう少し上手く処理出来そうな部分ではあった。

後は武士とか庶民の掌返しぶりが、個人的には愚直過ぎて若干苦手。

 

後書き

総評として、ストーリー上に若干の粗はあるけど、ぶっちゃけそんなものは二の次で、無名ちゃんの華麗で可憐なアクションを大画面の映画音響で観れるだけで1800円の価値はあったと思う(個人的に)。

後編のストーリー展開、評判がそんなに良くないことは何となく知っているが、無名ちゃんのアクションとか過去とか正体とかを見届けるために観に行こう。

 

p.s.帰りに書店で見かけて購入した。後編の描写もあるのでカバネリ部分は未読だけど、ポケモンXY&ZとかNEWGAMEとかの記事が濃くて良かった。バックナンバーでSHIROBAKO特集あったのでこちらも購入予定。

アニメスタイル010 (メディアパルムック)

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