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あの青い作業着を脱ぎ捨てて。

アニメ・漫画・小説・ゲーム等のフィクション作品の感想をゆるく綴ります。

GWにだらだら語りたい作品3選【アニメ編】

第三弾はアニメ編。

超王道以下略。
 
(1)『SHIROBAKO』 

私は、アニメに限らずフィクションに触れるとき、キャラクターに感情移入することはほとんどない。主人公に自分を代入することなく、キャラに自分の境遇や気持ちを重ねることなく、「神の視点」で鑑賞することが多い。

 
けれども、SHIROBAKOに関しては、自分と重ねて涙したり、憤ったり、また自分を省みて行動を改めたりもした。理由は簡単で、自分と主人公の境遇、もとい労働環境や仕事の進め方に重なる部分が多かったからだ。そういう意味では、私が最も影響を受けたアニメと言えるかもしれない。
 
SHIROBAKOは、中堅アニメーション制作会社に制作進行として入社した新入社員・宮森あおいと彼女を取り巻く仲間たちが、アニメ制作に奮闘するお話である。気になるアニメ制作の細かい工程や裏事情、頻出トラブルと克服の仕方等を、「そこそこ」リアルに描いている。また、アニメ業界に限らず、普遍的なお仕事ものとしても「そこそこ」リアルに描いている。
 
この「そこそこ」というのがミソ。リアリティを追求しすぎれば、ホント見てて疲れとフラストレーションが溜まる駄作に成り果てるだろう。少なくとも深夜アニメに求めるものではない。
SHIROBAKOは、あるある50%、こんなんだったらいいな20%、ネーヨ!10%、え(゚_゚;)10%で構成されています。あと10%は?」と話すのは、このアニメの制作会社の社長。たまに「SHIROBAKOはリアリティに乏しい」と言っている人がいるが、そもそも完全なリアリティを追求して作られているわけではない。
 
主人公だけに焦点を当てているのではなく、色々なキャラクターの仕事やアニメへの想いが掘り下げられている、群像ドラマ的な部分もある。多種多様な立場・考え方が用意されているので、誰かしらに共感のではないだろうか。
その多種多様な立場の人間が、万策尽きる寸前まで知恵と体力を振り絞って、一つのアニメを作り上げていくドラマ的な感動は大きい。
 
ここからは、今まで以上にごく個人的な感想をば。「アニメ制作もの」としては満点に近い本作だが、「普遍的なお仕事」ものとして見たとき、一つ思う部分がある。出来不出来の問題ではない。不満というよりは、嫉妬と言ったほうが近い。それは仕事への、また仕事での成果物への愛である。
主人公を含めた登場人物のほぼ全員が、「アニメが大好き」というモチベーションを持って仕事に臨んでいる。仕事上、時にはぶつかり合うが、それも「愛ゆえの」ということが多い。また、SHIROBAKOを見ている人間も、ほとんどがアニメ好きだろう。私もそうである。
はっきり言って羨ましい。SHIROBAKOを見て、そういう感情を持つ自分を否定できなかった。自分の仕事の成果物自体に愛情を持ち、それを拠り所にして労働できている人間がどれほどいるだろうか。羨ましい限りである。
ちなみに、作中に1人だけ私(たち)と同じ境遇のキャラがいる。主人公の姉である。彼女は地元の信金で働き、有給をとって東京にいる主人公のもとを訪ね、「ルーチンを回すだけの、誰でもできる仕事だ」と愚痴る。主人公にアニメを業界(=成果物への愛に溢れ、自分を出せる仕事)の楽しさを伝えられ、羨みつつ、それでも彼女は地元に帰って労働に勤しむ。
ある意味で、彼女の存在は残酷というか、私(たち)に嫌なリアルを突きつけてくる。主人公たちの仕事と、姉を通した自分の仕事を対比して。
この嫌なリアルは、主人公の仕事への思いの再確認の手順として作劇上必要だったかもしれないが、どーせなら隠し通してほしかったなぁ、と思わないでもない。
 
…とまぁ、最後に若干負の要素を書いてしまったが、これから先、心が折れそうなときに何度も見返すであろう、傑作である。
 
(2)『フリクリ

 

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のちにエヴァ破の監督とかやる人の監督作。

何といえばよいのか、映像作品としての快楽指数が超高い。何も考えずにぼけーっと絵を見て、劇中音楽を聞いているだけでホントテンション上がる。

演出技法は結構独特で、挑戦的で、尖っている。突然漫画になるシーンがあったり、通常のシーンでも、必要以上に枚数を使って動きと動きの間をめちゃくちゃ強調したり。こればっかりは言葉で説明しても無駄で、もう見てくれ、としか言えない。

音楽もよい。the pillowsという、いわゆるロキノン系バンドの音楽を多用している。こういう、一般的なバンドの曲を挿入歌にしているアニメってほとんどないけど、ちゃんと世界観にあっていれば、相乗効果がある。the pillowsの曲は、メロディが静かでサビで音の厚みと声量が増す、っていう曲が多くて、盛り上がるシーンにうまく重なっていた。

で、ストーリーについて。あらすじは例によってwikiを。SF部分に関して、色々考察がなされているが、まぁそこに関しては明確な決め手もない気がするので言及を避ける。裏設定程度に捉えておくのが吉な感はある。

諸々の派手な演出や奇抜で意味不明感が強い設定に脚色されているが、この作品のテーマは、「主人公・ナオ太がひと夏の経験を経て背伸びをやめる」+「主人公の兄の元彼女・マミ美が、他人への依存からの自立する」という、とても地味な成長譚であるように思える。その成長のきっかけを、外部からやってきたハル子がもたらしたのだ。ハル子自身は全く意図せず、別の目的を持ってだが。

 

この地味な成長譚と、奇妙で意味不明なSF設定と、見ていて刺激的な映像。頭を使って裏設定を考察するもよし、頭を空っぽにして映像を眺めるのもよし。一粒で二度も三度もおいしい、傑作である。

 (3)『ef-a tale of memories-』

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美少女ゲームが原作のアニメ作品で、傑出して面白いのが本作。

原作からして、美少女ゲームにしては珍しい群像劇。選択肢もなかった記憶がある。

シナリオは、大きく二つに分かれている。千尋×蓮治のカップルが、千尋の前向性健忘症という大きな困難を乗り越えて幸せを掴む話と、みやこ×紘×景(千尋の双子の姉)の三角関係の話。ちょいちょい交わるが、基本的には別物として並行で進んでいく。この別物の物語を並行で同じ作品に詰め込む意義は、続編の『ef-a tale of melodies-』を見れば至極納得なのだが、本作の段階ではちょいちょい登場人物被ってるなー位の認識。

千尋×蓮治は、ひたすらに美しい、山あり谷ありの恋物語を丁寧に描きました、という感じ。ラストで、千尋の13時間の記憶リミットを、ただ蓮治を想い、想い返して、乗り越えることを激白するシーンは、涙なしでは見られない。千尋の穏やかながら諦念が支配している心を、蓮治がアレコレして前向きにする、という美少女ゲームの王道。

みやこ×紘×景の三角関係は、どろどろしている。こっちは、至って普通の三角関係モノ。みやこのトラウマとか100通メールとか色々あったけど、ぶっちゃけストーリーとしては凡。

で、このアニメの素晴らしさはやはり演出という作画というか、とにかく『絵』である。癖のあることでお馴染みのシャフト演出が、物凄い吉と出た作品である。

美少女ゲームって、fateとかDies iraeみたいなバトル物は別として、キャラの身体的な動きが乏しい。立ち絵+テキストウインドウが基本フォーマットで、動きよりもセリフや心情の描写がメインになっている。
これをそのままアニメ化するわけには行かないので、各社色々と工夫をする。例えば同時期にやっていたCLANNADなら、キャラの表情や細かい描写を異常に細かく描き、視聴者が飽きないようにしている。

efの場合は、キャラに細かく動きをつけるわけではない。むしろ逆。キャラを影絵にしたり、静止画カットを切り替えまくったり。けど、ちゃんと長回しで見せるべき部分はきっちりと枚数を割く。そのメリハリが、鬱々とした心情描写メインの本作品を、テキストなしのアニメとして楽しめるように押し上げている。

あと圧巻なのはOP。ゲームと比較したテレビアニメの一つの特徴として、毎週OPEDを流せる、というのは地味に大きいと思う。回を重ね、物語が進むごとに更新されていく。
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これはほんの一例。左が通常、右が最終話。蓮治が千尋を救っている。物語の進行とリンクし、毎週変化点を見つけるという楽しみもあった。手間はかかるが、他のアニメもバシバシやって欲しいわこれ。

他にも各話サブタイトルの頭文字を合わせるとOP曲のタイトルになる…とか、テレビアニメであることの特徴を最大限に活かしていて、非常に良い作品であった。

アニメは、最も触れるハードルが低い媒体だと思う。テレビやパソコンさえあれば無料で放送、公式配信されているし、ゲームはもちろん本や漫画と比較しても、能動性が低く、垂れ流ししやすい形態だ。けど、しっかり腰を据えて見るのも、時には楽しいと思います。