あの青い作業着を脱ぎ捨てて。

アニメ・漫画・小説・ゲーム等のフィクション作品の感想をゆるく綴ります。

【感想】『映像研には手を出すな!』大童澄瞳

映像研には手を出すな! 1 (ビッグコミックス)

映像研には手を出すな! 1 (ビッグコミックス)

アニメ制作×女子高生
青春冒険録!?
浅草みどりはアニメ制作がやりたいが、一人では心細くって一歩が踏み出せない。
そんな折、同級生のカリスマ読者モデル、水崎ツバメと出会い、実は水崎もアニメーター志望なことが判明し・・・!?
金儲け大好きな旧友の金森さやかも加わって、「最強の世界」を実現すべく電撃3人娘の快進撃が始まる!!!

SHIROBAKO』以降、漫画界隈でもちょいちょい見るようになったアニメ制作モノ。
とは言え、お仕事ではなく部活なので、今井哲也さんの『ハックス』とかに連なる系譜。
とは言い切れないのが、この漫画の凄いところ。

あらすじの通り、主な登場人物は3人。
「私の考えた最強の世界」を作ることを目指し、日々世界設定を考えイメージボード作成に精を出す浅草みどり
お金大好きで口が達者で美脚、プロデューサー気質の森さやか
カリスマ読モでお嬢様でありながら、アニメーターを夢見て人物画を描きまくる水崎ツバメ
この3人が、各々の思惑でアニメを作るための同好会「映像研」を設立しようとするところから、物語は始まる。

「浅草みどりが設定厨」という設定が重要というか、この漫画のキモである。
浅草さんが考える最強の世界を、いわば妄想を、浅草さんが設定画として描く。描こうとする。あるいは単に設定を考える。すると、あたかも3人がその妄想の中で、一定の物語に沿って動いているような場面にシームレスに切り替わる。妄想が、想像が、いとも容易く現実を侵食していくのだ。どこまでも自由な想像。
別に浅草さんが能力者だー、とかそういう話の展開ではない。漫画内の現実空間が、浅草さんの想像をきっかけに、設定的空間に切り替わる。しばらくの間妄想によって生まれた設定的空間こそ漫画内の現実であるかの如く話が進んだのち、無駄に細かい(もちろん褒め言葉)設定画が提示され、漫画内の現実空間に戻る。

例えば、部室のボロ小屋の修理作業も、彼女たちに掛かれば、宇宙船修復だ。


この妄想による現実の侵食、無駄に細かい設定はもちろんだが、キャラの掛け合いやハッタリ的理屈の言葉選びのセンスも負けず劣らず良い。

自由な妄想や設定の垂れ流しだけでなく、学校のアニ研らしく「限られた設備や時間や人員の中で良いものを作る工夫」がちゃんと描かれている。映像しかり、設備しかり。そういう地道さと、無限の想像力のバランスも良い。

ハッキリ言って相当面白い漫画だと思う。言葉では伝えられない、センスオブワンダーに溢れた作品であるし、何より作者が楽しんで描いていることが伝わってくる。今後が本当に楽しみ。