あの青い作業着を脱ぎ捨てて。

アニメ・漫画・小説・ゲーム等のフィクション作品の感想をゆるく綴ります。

【感想】『はねバド!』濱田浩輔

 

 

『はねバド!』は、個人的に今一番熱いスポーツ漫画である。
かつてジャンプで唐突に勃発した、『ニセコイvs恋染紅葉vsパジャマな彼女』の恋愛モノ三つ巴に敗れ去った作者であるが(パジャマな彼女)、こんなに熱いスポーツ漫画家に転身するとは。
とはいえ序盤は、前作の方向性を色濃く残した、萌え成分強めでスポーツ漫画としてはどちらかといえばゆるめな部類の漫画だった。が、4、5巻あたりから絵柄が変わり、中身もガチ目なスポーツ漫画に変貌を遂げた。表紙の絵柄変遷でも一目瞭然である。

 

 ※同一人物

で、この作品のスポーツ漫画、もっといえば「(女子)高校生の部活バトミントン漫画」として優れていると個人的に考えるのは、キャラの個性・掘り下げである。主人公はもちろん、チームメイト、各ライバル高校、主人公の母親、果ては対戦相手のむさい監督までもが、それぞれのバドミントンという競技や高校の部活動に対する思想・信念を持っている。そしてそれゆえに葛藤もある。その葛藤を乗り越えたり、乗り越えようとしたりしている。ただ熱いだけでなく、各人の哲学や人間的弱さを描いているのが良い。

バドミントンシーンの描写も良い。静と動のメリハリがしっかりとついていて、手に汗握る。また、僕はバドミントン素人なので中身の正否までは詳しく判断できないが、ダブルスの戦略や打つ方向・強弱をしっかりと論理的に判断している様も描いており、バドミントンというスポーツの面白さ・奥深さも伝わってくる(バドやテニス、卓球みたいな、ネットを挟んで行う競技は本当に経験がないので…)。

最新9巻において綾乃は、母(世界的なミントン選手)や周囲の人間、またバドミントンという競技との関係性について、一つのスタンスを獲得する。それは「強くなることに躊躇わない」「性格の悪さを自覚した上で、どんなに強くなっても優しい人になりたい」「母をバドミントンで超えることこそ、私の親孝行」というもの。このスタンスの獲得は、BWF(世界バドミントン連盟)の育成選手になるという行動に現れる。このスタンスの獲得までに、暫くの間良い意味で相当回りくどくて歪んだ綾乃の葛藤が続いてきたが、一つの決着を得た。

ちなみにこの漫画を受け入れられるかどうかの大きな分水嶺が、冒頭に書いた絵柄の変化に加え、主人公・綾乃のキャラ変貌…もとい狂戦士化に耐えられるかどうか、というところにあると思う。上述した回りくどく歪んだ葛藤の発露である。個人的にはこういう唐突な狂戦士化に抵抗感はなく、綾乃に至ってはめっちゃ好きなのだが(煽りのセンスが相当高い)、耐えられない人・萎えてしまう人も多いと思われる。最初期は声が小さくおっかなびっくりで小動物系だった綾乃ちゃん、今ではコート内外問わずゲス顔で相手を煽り倒すまでに成長したよ…。「はねバド ゲス顔」で検索検索ゥ!