あの青い作業着を脱ぎ捨てて。

アニメ・漫画・小説・ゲーム等のフィクション作品の感想をゆるく綴ります。

【感想】『症年症女』西尾維新/暁月あきら

 

症年症女 2 (ジャンプコミックス)

症年症女 2 (ジャンプコミックス)

 

 『めだかボックス』のコンビがジャンプに帰ってきた(スクエアだけど)。

無個性から脱却したくてたまらない、暗くて性根の腐った「少年」が、ある日「人の顔が認識できなくなる(ペンで塗り潰したように見える)上に12歳で必ず死ぬ」という新病にかかる、というのが話の取っ掛かり。少年は悲しまず、寧ろ「新病で死ぬ初めての人間なんて、とても個性的じゃないか!」と喜ぶのだがそれも束の間、自分と同じ病に苛まれている上に自分より先に死ぬ「少女」に出会う。

「少年」と「少女」は、お互いの顔だけは認識出来る。「少年」は「少女」を自らの手で殺すことで、「少女」が「新病による初の死亡例」になることを回避し、自分が初の死亡例として歴史に名を残すことを決意しあれこれ試行するが、偶然(?)が邪魔をして中々殺せない。また、無個性な「少年」とは対照的に、「少女」はこれでもかというほどの個性を詰め込んだパーソナリティを持っている。その事実は、「少年」を苛みつつも「少女」に惹かれ行く要因にもなる。「毒」とかいう「少年」の殺人計画を幇助する謎の人物も登場するなど、相変わらず風呂敷を広げることも忘れない。

2巻では、この「絶対に12歳で死ぬ病気」=「12歳までは絶対に死なない病気」であり、つまりは不死実現の可能性を孕むという、実に西尾維新的なコペルニクス的転回が提示され、これまた西尾維新らしい、一癖も二癖もある医師たちの存在も出てきて、きな臭くなって来た……もとい、物語のスケールが大きくなって来た。

個性だの無個性だのに異常に拘り、過剰に対比して描くあたりは、相変わらず。西尾維新の魅力は「過剰さ」だと個人的には考えているが、そこは良く出ている。作画もその過剰さにマッチしており、またキャラの表情も多彩で上手い。

ただ、一個だけ表現的に謎な部分があって、それは、「少年視点でない(少年不在のシーン)でも登場人物の顔が塗り潰されている」という点である。展開的に読者にも「少年・少女」以外の顔を認識させないということなのだろうが、まぁ若干気になる点である。それでも西尾維新なら、お得意のメタを巧みに使って、その疑問を設定に織り込んでくれるのでは、という淡い期待もないではない。

往来の西尾維新ファンならば、そしてめだかボックスを楽しめたならば、確実に楽しめる作品である。私は中学は戯言シリーズで、高校は物語シリーズで育った人間なので大いに楽しんでいる。それ以外の人?うーん、過剰さに耐えられれば面白いのでは。