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あの青い作業着を脱ぎ捨てて。

アニメ・漫画・小説・ゲーム等のフィクション作品の感想をゆるく綴ります。

【感想】『ビーンク&ロサ』模造クリスタル

 

ビーンク&ロサ

ビーンク&ロサ

 

「いらないですよ、普通の友達なんて」という帯が印象的な本作は、その文言通りどこか寂しさを感じさせる。凄惨な事件やら悲劇的な喪失やらは起こらず、むしろ所々コメディチックな部分があるのだが、読後に残るのはひたすら寂寥感。

世界観的には、普通の人間と、「怪人」と呼ばれる人間の敵で悪なマイノリティが対立しており、ビーンクとロサという主人公2人は人間でありながら幼い頃からとある理由で怪人の組織に身を置いている、というもの。対立と言っても、その深刻さはそこまで伝わってこないような描かれ方を(あえて)されている感じ。何だろう、世界観的には天体戦士サンレッドみたいな?でも雰囲気はアレと真逆でダウナーでちょっと空が灰色だから入ってますみたいな?少し違うかもだが、そこまで外れてもいないと思われる。ビーンクは読み書きも出来ず暗くてすぐ心折れる青年で、ロサはしっかり者で頭の良い少女。この2人が、怪人組織の中で、日常を生きていく。というかビーンクが些細な失敗して大げさにくよくよしてロサが「はいはい」みたいなテンションでビーンクの愚痴を聞く。という流れが5割くらいで、他は準レギュラーの怪人の方々の話だったり、1話限りの謎ゲスト(ビーンクと上司が仕事で出向いた長野の町興しに燃える女子集団とか、車を買う買わないで揉めている夫婦とか)の話だったり。この辺は自由で静かな筆の暴走。ビーンクとロサの関係性が絶妙。

第一話と第四話で語られる、ビーンクの電車に対する恐怖心というのが、何だか共感出来るんだか出来ないんだか微妙な按配で、まさにこの作品の不思議なダウナー感の最たる部分だと思う。また最終話の、ビーンクとロサの別れ(ビーンクは怪人組織に留まり、ロサは人間社会に帰る)は、言葉は非常に少ないのに、いやだからこそ余計に、一抹の寂しさを感じさせる。間の取り方、台詞のないコマの使い方が言葉には出来ないけれども非常に味があり、切なさを増幅させる。程よくデフォルメされたポップな絵柄なので、どこか童話めいた感覚もある。

中々言葉には変換し難い、他の作品では得難い不思議な読後感があり、度々読み返したくなる作品である。