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あの青い作業着を脱ぎ捨てて。

アニメ・漫画・小説・ゲーム等のフィクション作品の感想をゆるく綴ります。

【感想】『空中庭園の人々』冬目景

漫画 感想

 

冬目景作品集 空中庭園の人々 (バーズコミックス)
 

 「1番好きな漫画家は?」という問いに対して、迷わず「冬目景」と答えていた時期があった。今でも間違いなく、トップクラスに好きな漫画家の1人である。漫画を読む上で、「絵(とそれに伴う雰囲気)」が自分の好みかどうかというのはものすごく大きい。正直話が多少アレでも絵が好みなら買ってしまうし、話が面白そうでも表紙が好みでないと遠ざけてしまう。その点で言えば、冬目景は圧倒的に前者だ。話は正直合わない…という作品もなくはない(特に中長編)。けれども部屋に飾っておくだけでも、購入する価値がある。絵を見ているだけで、良いのである。

 冬目景と言えば、そのやや古風な画風もあいまって、「退廃的」「鬱っぽい」「後ろ向きなモラトリアム」というイメージが強い(気がする)。実際、そういう作品も多い。代表作の羊のうたとか。もちろんそういう作品も面白いのだが、コメディベースの作品も結構あり、個人的にはそれらがすごく好き。1巻で終わる美大浪人生のほんわかラブコメの「ももんち」とか、妖怪(?)アパートコメディの「ACONY」とか。要は、絵がめっちゃ良くてシリアスでねっとりとした作品が多いけど良質なコメディも描けます、というのが冬目景の魅力なのである。クソほど遅筆で超絶飽き性なので長編になればなるほど展開も刊行ペースもグダるのはご愛嬌。むしろ様式美として受け入れたくなる。もはや信者。

 で、ようやく本作「空中庭園の人々」である。短編集。先述の冬目景の魅力を短編にして1冊にまとめている。つまりは至高。個人的には世に出ている全短編集の中でも五指には入るのでは、というくらい好き。

 宇宙人・小人・ゾンビ・幽霊・脳内タイムスリップなどを題材にしながら、ゆるっとしたミニマムなコメディかつちょいおセンチな作品が詰まっている。個人的には、ロリィな宇宙人がサバサバJDのアパートに住み着く「ELEMENT7」が良い。コメディ成分良し、展開良し、ロリィな宇宙人の可愛さ良し、元彼に扮した宇宙人相手に鬱憤を晴らすシーン良し、最後の宇宙人が川から帰っていくシーンの絵面の切なさ良しと、何度も読み返してしまう。その他の話も、「少し不思議」で冬目景らしい可愛い女子が活躍する良質なコメディに仕上がっている(最後の「青密花」を除いて。これは冬目景のイメージ通り暗くて退廃的でねちっこい。優等生で非の打ち所がない姉の自殺をめぐるお話。これもらしさが出てるし、短編なので鬱屈としながらもすんなり読めて無駄がない)。

 往来の冬目景好きにはもちろん、良質な短編集を読みたい人にも是非一読いただきたい作品である。