読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

あの青い作業着を脱ぎ捨てて。

アニメ・漫画・小説・ゲーム等のフィクション作品の感想をゆるく綴ります。

GWにだらだら語りたい作品3選【小説編】

GWはどこにも行かずに来る労働の日々に備える所存である。

せっかく時間が有り余っているし、もう直ぐ生誕四半世紀ということで、ここらで人生振り返ったろ、と思い立つ。
私の人生、思えば本読んでるかゲームしてるかアニメ見てるかのどれかでしか無い。
というわけで、各媒体で私が個人的に愛してやまない作品を3個ずつ選んでふわっと語っていく。
第一弾は【小説編】。文芸、SF、ラノベから一作ずつ。
(1)『告白』町田康
前にも記事にしたが、やはりこの作品は外せない。

bonsai-shiori.hatenablog.com

 

まず文体が素晴らしい。主観と客観・時代性と現代性・高尚と低俗を一緒くたにした文章。この文章を読んでいるだけでも楽しい。

キャッチコピーである「人はなぜ人を殺すのか」という問い対する一つの解を、丁寧に描いている。ミステリでいう動機とも異なる、人生スパンでの選択・思考の考察。主人公熊太郎がどのように考え、どのような自意識を育み、なぜ人とずれていき、最終的に十人斬りという暴挙に出たのか。そして自殺直前の、心の奥の奥を掘り返す自問自答。

私自身、器用に生きてきた人間ではないので、あれこれ考えて社会とうまく接続できない熊太郎に共感する部分もあった。特にラストの自問自答のシーンでは涙。傑作。

 

(2)『ハーモニー』伊藤計劃
ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

 

これも世界とうまく接続できない系人間のお話し。あらすじ紹介はwikiに譲る。

ユートピアディストピアは紙一重だよね的世界観や意識がない民族の存在、大量自殺事件の顛末…とかの、SFとしてストーリーの筋も普通に面白い。普通に。ちょっと破たんあるけど(WatchMe入っていない子供たちはハーモニーしないのでは?とか、ミァハ何で生きているのというところが一切触れられていなかったりとか…)。

その普通さや破たんを補って余りあるのは、その(似非)ユートピア世界に馴染めなず、またそんな思考の基を作ったかつての旧友・ミァハの幻影に囚われまくっている主人公・トァンの一人語りである。

過剰な優しさに耐えられず、日本から戦場に飛び出す後ろ向きな行動力。10年前、ミァハともに自殺を図り、自分だけ失敗して生きてしまったことに対する負い目、心の中で続くミァハへの謝罪(ミァハ生きてたけど…)。

特に序盤は、後ろ向きでネガティブでブルーで女々しい心情吐露が、ダウナーな語り口で続いていく。28歳女性の口から。

優しさダメ、体をサーバに繋ぎたくない、私の体は私のもの、ミァハごめん…という独白、むしろこの独白のためにSF的ガジェットや物語が配置されているのだ(と個人的に無理やり読んで楽しんでいる)。

ちなみに劇場版アニメも存在する。評判は微妙で、特にラストのトァンがミァハを射殺する動機の改変は賛否の否が優勢である…が、個人的には劇場版もかなり好み。とくに動機の改変はGJだと感じている。

というのも、原作の動機は、ミァハが起こした大量自殺事件及びハーモニー計画(人類補完計画みたいなもの)の過程で死んだトァンの父と自殺同志・キアンの復讐である、とされている。一方、劇場版は「ミァハ、愛している」という告白とともに射殺している。人類の意識のハーモニクスを目指す今のミァハを否定し、昔のような、世界のすべてを憎んで牙をむいていたミァハを(少なくとも自分の中では)保存したいという思いで引き金を引いている。

まぁ、SFものとしてみれば原作の動機のほうが収まりが良いのか…と思わないでもないが、正直、父とキアンにそこまで肩入れする心情にはあまり納得できない。しかも、私はこの物語を百合物として消費している側面が強い。ゆえに劇場版のラストのほうが好ましいのだ!!

最後は劇場版のお話しになってしまったが、原作も素晴らしい。「優しさに殺される」「孤独の持久力」等の厨二セリフも冴え渡っている。 あの社会に馴染めない人のダウナー感は、SFのみならず他ジャンルでもなかなか味わえない。

(3)『人類は衰退しました田中ロミオ

人類は衰退しました 1 (ガガガ文庫)

人類は衰退しました 1 (ガガガ文庫)

 

わたしちゃん可愛い。以上。

で終わらせられるくらいわたしちゃんは腹黒可愛いのだが、せっかくなのでもう少し。

田中ロミオといえば美少女ゲーム界隈で名を挙げたシナリオライターである。『CROSS†CHANNEL』とか『最果てのイマ』とかの人。大体の話の展開としては、人間関係を上手く築けない系少年少女が、SF的要素を取り込んだ世界であれこれして、人間関係を前向きに捉えた矢先に微妙にバッドエンドを迎えながらもその中で最善を掴んで本人たちは割と前向きに生きていく、という感じ。

人退は、シリーズ通して基本的にはドラえもんのような感じで話が進む。妖精さんが様々な不思議現象を起こし、それに対処したり利用しようとして失敗したり。そういう中で、最初は擦れていたわたしちゃんも徐々に素直に…みたいな。

で、最終巻で全ての謎が明かされる。妖精さんの正体とか。詳しくは割愛するが、思ったより人類は衰退していました。最高のタイトル回収。

ハッピーエンドとバッドエンドがごちゃまぜになった感じは本作でも健在、小説でもロミオって感じだった。

SFとしてもとても面白かったが、インドアで自虐的で擦れ気味だったわたしちゃんが、みんなと協力して月から生還するシーンは心にくるものがあった。この捻くれ人間の王道化がロミオ節。

ドラえもん式の部分は、ネタさえあればいくらでも新しい話を積み重ねられるので、忘れた頃に短編集を定期的に出して欲しいなぁ、という今日この頃である。

以上、3作品を選んでみた。なんかバラバラでちぐはぐな散文になってしまったけども、まあ良し。なんか全部社会と馴染めてない人が軸だ…。