【感想】『恋愛の解体と北区の滅亡』 前田司郎
- 作者: 前田司郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/11/29
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という言葉的にはあまり穏やかではない世界観の中、大多数の人はそんなに真剣に捉えておらず、主人公も例に漏れず。
「宇宙人」という荒唐無稽で壮大な設定と、ひたすらミニマムでどーでもよい(しかし日常に寄り添っている)思弁の対比は、狙いすぎかもしれないが、その思弁は(いい意味で)無駄に懇切丁寧に描かれている。
例えば、冒頭のビニール傘を買うシーン。
屈強そうな男(通称ゴールデンジム)にレジの順番を抜かされ、怒りを覚えるという描写に8ページ使う。抜かされたことに対する憎悪や劣等感、自尊心の損傷の分析描写に20ページ使う。
このささやかな「事件」をきっかけに、主人公は自尊心、憎悪、ひいては恋愛についてひたすらダラダラと思弁的に分析をする、「解体」していく。北区の滅亡など、もはや序でである。そういう、いわゆる独り言文学・自問自答文学を、ぬるぬるとした空気で続けていく様は、読んでいて心地よかった。