あの青い作業着を脱ぎ捨てて。

アニメ・漫画・小説・ゲーム等のフィクション作品の感想をゆるく綴ります。

【感想】『波よ聞いてくれ』沙村広明

沙村広明の『波よ聞いてくれ』2巻を読んだ。

沙村広明は、『無限の住人』みたいなバトル物や、『ブラッドハーレーの馬車』とかの近世欧風エログロが有名だと思うが、『波よ聞いてくれ』はカレー屋のバイト・鼓田ミナレがひょんなことからラジオのパーソナリティを目指す、現代の北海道が舞台のコメディ色が強い作品になっている。

沙村広明の特色は、鉛筆書きの独特かつハイレベルな戦闘描写やエログロといった部分もあるが、個人的にはコメディよりの作品に表れる言葉のチョイスのセンスがツボである。『ハルシオンランチ』とか『おひっこし』とか。

今作の『波よ聞いてくれ』でも、そのセンスが存分に発揮されている。高質な漫才のような会話が、至るところで楽しめる。

で、この作品の更に素晴らしいのは、その言葉・会話劇のセンスと「ラジオもの」というテーマのチョイスが超マッチしている点である。

ミナレがラジオパーソナリティとして才能がある、ということを、高い説得力を持って読者に訴えてくる。このラジオ実際に聞きたくなる。

ラジオのシーンと、それ以外のシーン(元彼とデートしたりカレー屋で働いたり)は半々くらいで、その塩梅も良い。人間関係の行方も気になる。

しかし沙村広明ほどハズレがない上多彩な漫画家はいない気がする。末恐ろしい。